日別アーカイブ: 2005年11月24日

デンワボックス

虫が群がりチカチカと今にも電球の切れそうな街頭の下、僕は暗い寒空をほとんど放心状態に空を見上げ待っていた。というか長い長い時間のなかで待たされていた。
毎回おでこの血管が切れそうになるぐらい遅刻してくるわりに、小さな中古の外車の窓ごしにへらへらと笑いながら登場するその待ち人はここ数年間、時間通りに来たためしがない。
イラつく心を抑え時計をしない主義の僕は待ち合わせの時間を確認しようとジャケットのポケットをまさぐる。
出てきたのはライターとコンビ二のレシートと10円玉が三枚。
「しまった!」
携帯電話を携帯していないことに気づく。ついでに吸いかけのハイライトも。
家に携帯を取りに戻ることも考えたが、戻る時間を考えれば待っているほうが何かと都合がよいと僕の中の「めんどくさいくん」が耳元でささやいた。
「じゃ、いつもの公衆電話のまえで待ち合わせと言うことで」と電話を受けて約1時間。
いまだに来る気配さえ感じられない事に不安と苛立ちを覚えた。
携帯電話の大々的な普及に伴いその数を減らしつつある公衆電話。
数が激減したおかげで、たまに目に付くそののっぽなガラス張りのハコは雨風もしのげる僕たちの絶好の秘密の待ち合わせポイントになっていた。
裏通りの港に近い工業地帯の開けた道沿い。
小さな街灯ぽつぽつとあるぐらいで深夜には人通りがほとんどないこのポイントは待つ者に孤独感を植えつける場所でもあった。
いつになく待ちぼうけの僕は海風を受けながら仕方なく公衆電話で連絡してみようと引き戸を開けた。
突然の事態に驚きの声が出そうになった。
ボックスの中に何か大きな塊が地面にうずくまっている
よく見るとそこにはなぜか髪の毛がビッチョリと濡れ震えている女子高校生。
ボックス内に座り込み僕の存在を気にもせず受話器を耳に強く当てていた。
よく見ると足元にジェラルミン製っぽい銀色のごついケースを抱えている。
声をかけ様かとも思ったが彼女の何人も寄せ付けないその異様な雰囲気に足踏みしてしまった。
仕方なく電話ボックスを出た僕は途方にくれることに。
空を見上げると灰色の厚い大きな雲が満月の光をさえぎろうと少しずつ僕らのほうへ近づき動き始めていた。
続く…。

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勝手ヤジオ論

男には自分の世界がある。
喩えるなら一筋の流れ星。
人は年を重ねると、出世魚のごとく不名誉な俗称を与えられる場合がある。特に男性には。
ジャリ→ガキ→中坊→若造→半端モン→オヤジ(ヤジオ)→ジジイ…。
明確な変性時期は定かではないが、確実に私はそう呼ばれて生きてきた、そしてこれからも。
ついに第5フレーズ時期を迎えた私自身、まだ第4フレーズあたりでいたいという欲求はあれど、最近オヤジと言うフレーズ兼立場に居心地の良さを覚えてきたのもまた事実である。
10年前には周りからは臭いと呼ばれ、公園では若者のの絶好の狩りの対象。
さらに数年前には、世のOLたちがそのオヤジ独特の立ち振る舞いをおかしくまねたものだ
昨今、「チョイ悪オヤジ」なる言葉でもてはやされてはいるが所詮は雑誌ポパイやブルータスに踊らされたマニュアル君世代の延長戦にしか過ぎない。
ヤジオは決して誰かに狩られたり、寒いギャグを言ったり、中年を模したギャルではない。
ま、時にはそういうこともあるだろが…。
本当のオヤジ。
映画にしろ現実にしろ、苦悩するものを若い人間をじっと見守りながら時に助け舟を出す姿。
自制心を持ち、でしゃばることもなく、豊富な知識のもと冷静に事態に対処する大人の男。
ある程度社会的責任を負わされつつそれ相当の特権もついてくる。
それがヤジオ。
私がかつて出逢ってきたたくさんの先輩ヤジオの方の中にもそういった本物のヤジオも…。
真のヤジオがいるからこそ、主役が引き立ち、新しいことを伝えていける。
勝手な思い込みかもしれませんが、どうせなるなら私はそういうヤジオになりたいと思っているのであります。
ただそう思っているだけなのです。
実現できるかどうかはわかりませんが。
そう思ってるだけなのです…。
オヤジのおじや。
以上

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